第3回 壁を越える経験が人生を育てる

第3回 壁を越える経験が人生を育てる
ピアノを習っていると、
「できない」という壁に何度も出会います。
思うように指が動かない。
譜読みが難しい。
何度練習しても思うように弾けない。
子どもたちは、そのたびに悔しさを感じます。
でも私は、
その経験こそが人生を
育てると信じています。
今は、一人ひとりの個性や
気持ちを大切にする時代です。
それはとても素晴らしいことです。
一方で、子どもたちが
「少し頑張ってみる」
「あと少し挑戦してみる」
という経験を積む機会は、
以前より少なくなっているようにも感じます。
だからこそ私は、
習い事には
大切な役割があると思っています。
学校とも家庭とも違う場所で、
思うようにできないことに向き合い、
少しずつ努力を積み重ね、
時間をかけて
できるようになる喜びを知る。
その経験は、
ピアノが上達するためだけではありません。
「努力は無駄ではない。」
「昨日できなかったことが、今日はできる。」
そんな実感を、
自分自身で味わうことができます。
レッスンでは、
一気にできるようになることは求めません。
一小節ずつ。
片手ずつ。
昨日の自分より少しだけ前へ。
その小さな積み重ねが、
大きな自信へと変わっていきます。
当教室の卒業生には、
看護師として経験を積み、
さらに助産師という夢を叶えた方がいます。
また、私立中学・高校で
数学を教えている卒業生もいます。
大学では数学を専攻しながら、
第二専攻で音楽を学び、
教員免許を取得しました。
もちろん、
その方々が夢を叶えた理由は
ピアノだけではありません。
けれど、幼い頃から積み重ねてきた
壁に向き合う力。
努力を続ける力。
本番で自分を信じる力。
それらは、
人生のさまざまな場面で
支えになっていると
私は信じています。
私が育てたいのは、
ピアノが上手な子だけではありません。
壁に出会っても諦めず、
自分で考え、
一歩ずつ前へ進んでいける人です。
音楽を通して育ったその力は、
一生の宝になります。
だから私は今日も、
一人ひとりの「できた!」を信じて、
レッスンを続けています。
音楽教育とは、
ただ演奏技術を教えることではありません。
壁に出会っても諦めず、
努力を積み重ね、
自分の力で未来を
切り開いていく力を育てること。
私は、そんな「人生を歩む力」を
育む教育こそが、
音楽教育の本当の価値だと考えています。
だから今日も、
一人ひとりの成長を信じて、
レッスンを続けています。
